2001 千葉大学サマースクール 高校生のための現代数学案内
--- 格子と行列 ---

開催責任者:千葉大学 理学部数学・情報数理学科 (石村 隆一、志賀 弘典)
講義の目的: 高校段階の数学と、“現代数学”との間には大きな イメージの差があります。 今発展しつつある数学の姿に触れたいと思っている人、 また、大学で数学を学ぼうとしている人を対象にして、 現代数学のイメージをつかんでもらうことを目指します。 目に見え、自分達で実際に扱って実感できる題材を用い、実習しながら話を進めます。
募集人員:20名
実施場所:千葉大学西千葉キャンパス内けやき会館2階会議室2

日程:7月21、22、23日
7月21日(土曜日)
10:00 - 10:30サマースクールの説明と自己紹介
10:30 - 12:00平面での格子と行列(講義)志賀
13:30 - 15:00数と式について上野
15:30 - 17:00今日の演習1講師+大学院生補助員
7月22日(日曜日)
10:00 - 11:30さまざまな格子とそのグラフによる表示法(講義)志賀
11:30 - 12:30今日の演習2 講師+大学院生補助員
13:30 - 15:00市松模様の幾何学1難波
15:30 - 17:00市松模様の幾何学2難波
7月23日(月曜日)
10:30 - 12:00通信システムと格子(講義)志賀
13:30 - 15:00サイエンスプロムナードを歩く北詰
15:30 - 17:00今日の演習3講師+大学院生補助員

講師:学内
志賀 弘典 (千葉大学、自然科学研究科、教授)
北詰 正顕 (千葉大学、理学部、教授)
   学外ゲスト講師
上野 健爾 (京都大学、理学部、教授)
難波 誠  (大阪大学大学院、理学研究科、教授)

今年度は、高校では扱わない「格子」という対象を「行列」 を通して考察する講義を基本に、ゲストの学外講師 の講義も交えて、現代数学の幾つもの側面を知ってもらう ことを目的にしました。予備知識は数学 A, 数学 I 程度を仮定します。


申込に当たっての注意: 参加希望者は、参加希望理由を簡単に述べた文書を添えて下さい。 希望者多数になった場合の選考資料にします。 特に希望があれば高校の先生の参加(講師、高校生と一緒に考える場として)を 積極的に受け入れます。

連絡先:
〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町 1-33
千葉大学 理学部 数学・情報数理学科 「サマースクール」係
fax: 043-290-2733, tel: 043-290-2727
mail: summerschool@math.s.chiba-u.ac.jp

申込方法:サマースクール「高校生のための現代数学案内」聴講希望、と書いて
(1)氏名、(2)在学高校、(3)学年、(4)住所、(5)電話
および、聴講希望理由(形式自由)を添えて、上記 fax または mail または郵送で申し込む。
全日聴講を原則とします。

申し込み締切: 7月3日


[講義内容紹介]

「基本講義:格子と行列」 講師 志賀 弘典

 格子も行列も日常使われている言葉ですが、数学の世界ではそれとは異なった定まった意味を持ちます。
 (1)格子とは平面あるいは空間の中に規則正しく配置された点たちのことですが、その配置の違いによって生じるさまざまな性質を調べると、現代数学のいろいろな分野で用いられる興味深い法則性のあることが分かってきます。
 (2)このような格子は行列によって表示され、またその性質は「鏡映」と呼ばれる空間の変換を通じて法則性が明らかにされてゆきます。
 (3)また、格子は社会における情報伝達の基礎になる「符号理論」の研究においても重要な役割を果たす概念になっています。
 この連続講義では、上の3つのテーマについて易しい演習問題や実例を示しながら解説します。また、毎日のトピック講義とも連係して話を進めます。

「数と式」 講師 上野 健爾

 数は数学ではなくてはならないものであるが、その性質が本当の意味で分かったのは 19世紀になってからである。文字式が数学で自由に使えるようになるにも長い年月が かかっている。本講演では数と式を歴史的な観点を加味しながら述べる。特に、中国や 日本(和算)での式の取り扱いについても述べ、数学の発展に式がどのような役割を したかを考えたい。

「市松模様の幾何学」 講師 難波 誠 

 2つの色を格子縞に互い違いにぬった模様を市松模様とよびます。これは元禄時代の人 気歌舞伎役者 市松が好んで着ていた着物の模様からそう呼ばれたといわれています。いま、市松模様は基本になる長方形を「鏡映」と呼ばれる平面の変換を繰り返して作られていると考えることができます。
 この考えを基本になる図形である長方形を別のものに換えたり、さらに平面でなく、球面にしたらどうなるでしょうか。さらに別の曲がり方をしている双曲平面で考えたらどうなるでしょうか。
 この問題は、実は代数方程式、群、複素関数論、超幾何微分方程式などという現代数学のさまざまな分野に絡んできます。
 さらに曲面上に(位相的な)市松模様を描き、時間と共に模様がぶにゃぐにゃと変化する様子を調べると、現代数学の未登峰の「一つポアンカレ予想」を彼方に望める地点に到達するのです。

「サイエンスプロムナードを歩く」 講師 北詰 正顕

 現在理学部の敷地には「新総合研究棟」という8階建の建物が建設され、ここで新しい自然科学研究の施設が用意されつつあります。その1階の広いフロアには「サイエンスプロムナード」という各分野のトピックを視覚的に展示したスペースが設けられています。 この時間では、そこにある奇妙な数学分野の展示を案内します。
 ものの入れ換え、図形の変換などを考える際に有用な「群」という概念があります。 19世紀にガロアという数学者が5次方程式を考察するときに、この群の性質を用いたことは現代数学が生まれてくる過程で大きな出来事でした。
 有限群の研究は20世紀後半に非常に進展しました。それらを列挙し各々の性質を調べる作業が一段落し、現在ではその成果は大きな「辞書」となって発行されています。
 実は、その辞書の最期に載っている有限群は“モンスター”と命名され、さまざまな興味深い性質を持ち、現在も最先端の研究が続けられています。ここでは、このモンスターに出会うことができます。